作品ご紹介

Retoucher 1

「Retoucher 1」木原康行銅版画作品

木原康行 銅版画

meteor 1

「meteor 1」小林千春イラストレーション作品

小林千春 イラストレーション 流星体シリーズ

meteor 3

「meteor 3」小林千春イラストレーション作品

小林千春 イラストレーション 流星体シリーズ

meteor 4

「meteor 4」小林千春イラストレーション作品

小林千春 イラストレーション

meteor 5

「meteor 5」小林千春イラストレーション作品

小林千春 イラストレーション

展覧会のご案内

…いつまでも、自由の道を歩みたい。(木原康行)

木原康行作品『Retoucher1』

 本展は、木原康行先生(1932-2011)とその次女である小林千春先生の二人展です。

 1932年生まれの木原先生は35歳にして両耳の聴力を完全に失いますが、作家を志して帰国資金を持たぬまま、38歳で美術の都フランス・パリへと渡ります。しかし、49歳で肺癌を患い、また同時に愛娘の長女・美珂さんを亡くして心底打ちひしがれますが、決して銅版画をあきらめず、ビュランを手放すことはありませんでした。そして1999年、作家の人生における、あらゆる感情を排除したその精緻な作品世界がフランスの美術界に認められ、長谷川潔氏についで、日本人として二人目となるフランス画家版画家協会の正会員となりました。

 一方、父を追うようにして海を渡った千春先生は当時まだ小学生でしたが、堪能なフランス語と繊細な造形センスを活かして、パリにあるグラフィックデザイン専門学校INITIATIVEを卒業するに至りました。そして帰国後の現在は、イラストレーターとして活躍されています。

 今展では、お二人の作品約28点を一堂に展示し、それぞれの人生観が色濃く反映された作品の数々を展観します。是非ご高覧ください。

〔図版=『Retoucher 1』木原康行 銅版画 エングレーヴィング〕


開催概要

展覧会名
木原康行・小林千春展「meteor」
会期
2014年2月8日(土)~2月15日(土)※12日(水)休廊
開廊時間
午前11時~午後6時
入場観覧料
無料
展示内容
木原康行銅版画作品約20点・小林千春イラストレーション作品8点・木原康行資料・関連書籍など
販売
展示作品は販売します。
作家来場日
小林千春:2月8日(土)・9日(日)・10日(月)・11日(火)

木原康行 - 作家の言葉

自分の在り方 (知人への手紙より)

木原康行銅版画作品『Ecale1』

 現在の在るがままの状態を現す、それが現実の自分の在り方だと思います。長い時間の積み重ねが、一瞬、目前の形に移しかえられるといってもいいのです。ただただ、経験と体験の結果が現れるだけです。

 思想などいうものは、持っていません。絵はこうでなければいけないという持論もありません。有るのはただ、時間の流れと共に在る、自己自身です。(木原康行)

〔図版=『Ecale 1』 木原康行 銅版画(エングレーヴィング) 98×145mm 1971年〕

ご参考(1)木原と共にパリに生きて (木原千珂)

木原千珂さん(木原康行夫人)の言葉

在りし日のパリの木原康行先生

 1970年4月19日、片道切符で渡仏以来、パリ生活40年が過ぎた。2011年4月24日、私は突然木原と共に生きた時間を失った。

 彼の後半は体力も弱まり、外出もせず、机にしがみついて毎日ビュラン彫りと対決していた。私は、顔より後姿の方をよく憶えている。一版に何ヶ月もかかる銅版画ビュランができ上がった日は、「完成!」と両手を上げて喜んでいた。久しぶりに見た笑顔だった。

 彼亡き後、引き出しを片付けていると、私に見せたことのないノートが見つかった。細かい字でびっしり書かれたノートのほか、バラバラな紙片に書き散らされたメモ、中には既に茶色く変色しはじめているものもあった。その内容のほとんどは、「画とは何か」、「自然とは何か」、といった自問自答が多い。机の上には次の仕事のための下図が置いてあった。

 まだ仕事を、と思っていたのだ。 「銅版は我が命」と言っていた。「僕は長く生かしてもらった。今後、仕事のできない時間は要らない。」その通りに彼の時間は止まった。時間という命を銅版に刻み続けた彼のビュランが、末永く生き延びんことを。 (2011年8月 木原千珂)

〔写真=在りし日の木原康行先生(パリにて)〕

ご参考(2) 木原康行とその版画 - 思い出風に

作家 中村真一郎(1918-1997)による思い出

『Temps statique』 木原康行

 木原康行の思い出は、すべてパリに繋がる。

 最初の強烈な印象は、私と妻とが著名な英国の版画家のヘイターのアトリエで、特殊な刷りの技術の説明を受けていたところへ、色の抜けるように白いミミ嬢が現れて、彼女の家へ私たちを案内して行った時だった。それは入り組んだ庶民的な街の一角の、狭い仄(ほの)暗い部屋の中で、そこには室内に天幕のようなものが張ってあって、親子四人が折り重なって暮らしている、という趣きだった。そして、ミミ嬢の父親、つまり版画家の木原は、その穴蔵の奥に、腰を痛めて寝ていて、到着した私たちは、忽ち医者よ薬よ、と駆けまわることになった。

 休日のことで、中々、やってこない巡回医師を待ちながら、ミミの妹のチハル嬢が、隣の建物の壁にボールをぶつけて遊んでいた、孤独な姿が忘れられない。両親を追ってパリへ来たばかりで、いきなりフランスの小学校に入れられたチハルちゃんは、私たちに向かって、読本を朗読して聞かせてくれたが、やって来て間もない、この幼女が、もうフランス人と同じ発音で、短文を読み上げるのに、感嘆して耳を傾けていた記憶がある。

 それからようやく手に入った痛みどめの薬を飲まそうとして、分量を間違ったら大変だと、私たちは医者の書きなぐった処方を、あれこれと当てずっぽうで解読しようと苦心したが、ようやくsuppositoireと読みとった時は、もう薬は奥さんのチカさんの手で、木原の口の中に入る寸前だった。版画家は尻から挿入する薬を、危うく飲み下すところだったのである。

 それから思い出は大きく飛んで、今度は、セーヌ河畔の、いわゆる「フロン・ド・セーヌ」の新興高級住宅地の、明るくて超モダーンな高層建築のまえの、コンクリートの平坦な広い庭の向こうの方に、すっくと立って私たちを待ち受けている、俊爽無双の木原の姿である。

 その建物の中の、木原の新しい部屋は光に満ち、そこには何度も通って、夜遅くまでお喋りしたり、美術館入りをひかえていた美貌のドミニック嬢が、眼もとにふざけた色を浮かべて、版画家を暖かくからかったりするのを目撃したり、すっかり少女らしくなったチハルさんが、洗ったばかりの髪を押さえながら、扉を半開きにして顔を覗かせたりするのに、出会ったりしたものである。

 それから東京で展覧会をするために、制作中のチカさんの絵をソファの上に何枚も並べて見て、感想を述べたり、その展覧会が成功して、パリへ戻ったチカさんから、その絵の中から抜け出してきたような、地下鉄の入口から空に飛び立って行く幻想を伝える、航空便が舞い込んできたり、-そのようにして、木原と木原家とは、私の生活の中に、すっかり溶け込んでいる。そして、その愉しい想い出の遥か上の方に、あの緻密な線の組み合わさった、木原の版画の世界が、あたりの空気を凍らせるようにして、孤独に架っている。

 この日常から完全に遮断された芸術の世界と云う、木原の版画の在り方は、常に世間の中に居心地よく混ざりこもうとしている、多くの日本風の芸術とは、截然と区別されている。あのように厳しい線の組み合わせは、湿潤な日本の風土からは生まれることはできない。その誕生を可能としたのは、あの知的に乾燥した、そして感覚が繊細を極めるフランスの伝統的な雰囲気であった。

 その意味で彼はフランスの芸術家である。しかし私は近頃、そのデカルト的なきびしい幾何学精神の底に、丁度、彼が日本の酒をこよなく愛するのと同じような、日本伝来の細心な名人気質がひそんでいることに、思いあたるようにもなっている。

〔文:中村真一郎(『版画藝術』29春号/1980年/阿部出版)〕

〔図版=『Temps statique』 木原康行 銅版画(エッチング) 190×145mm 1972年〕

作家略歴

木原 康行(Yasuyuki Kihara 1932-2011)

個展会場(ギャラリータマミジアム)内の木原康行先生

1932年北海道名寄市生まれ/1955年武蔵野美術学校本科西洋画科(現・武蔵野美術大学)卒業/1970年渡仏 S.W.ヘイターのアトリエ17で銅版画を学ぶ/1972年現代フランス版画展(ポントワーズ/フランス)/第3回ブラッドフォード国際版画ビエンナーレ(イギリス)/イズリングトン銅版画グループ展(ロンドン/イギリス)/第4回クラコウ国際版画ビエンナーレ(ポーランド)/第10回サロングラバド国際版画展(マドリッド/スペイン)/1973年プリント・クラブ展(フィラデルフィア/アメリカ)/第3回青年美術家1973年国際展(ニューヨーク/アメリカ)/1974年第11回サロングラバド国際版画展(受賞)(マドリッド/スペイン)/1977年中村真一郎と木原康行による詩画集『死と転生』(大阪フォルム画廊)刊行/『死と転生』発刊記念展を東京、大阪、名古屋、浜松、札幌で開催/1978年日本現代版画大賞展(西武百貨店/東京)/日本の現代版画展(パリ/フランス)/1980年1980日本の版画(栃木県立美術館)/1985年この頃からアクリル画の制作も始める/1986年現代版画と技法展(練馬区立美術館)/1993ヘイターとアトリエ17展(デッサン・版画美術館/フランス)/1995年現代版画の展望展・Part2(新潟市美術館)/1998年第3回サロン「coup de coeur」(パリ/フランス)/1999年第64回フランス・画家・版画家協会展(パリ市6区役所/フランス)/フランス・画家・版画家協会正会員となる(日本人では長谷川潔についで2人目)/2001年フランス・画家・版画家協会展(パリ市6区役所/フランス)/2002年ラビリンス「線の迷宮」展(目黒区美術館)/2003年銅版画の魅力展(ギャラリータマミジアム)/木原康行個展「始原のかたち」(北海道立旭川美術館・企画展)/木原康行個展「中村真一郎と木原康行による詩画集『死と転生』再考展」(ギャラリータマミジアム)/2004年木原康行個展「精緻の美学2」(ギャラリータマミジアム)/2005年「故郷から世界へ」-版画・海を渡った4人のアーティストたち-(ギャラリータマミジアム)/2006年木原康行展「LABYRINTH(ラビリンス)-銅版画とアクリル画の迷宮」/2008年木原康行個展「Pendule」-銅版画とアクリル画による幾何学的世界/2010年木原康行新作銅版画展-「Entassement」/2011年パリにて永眠/2012年追悼 木原康行銅版画展「Temps statique(静的時間)」


作品収蔵:パリ国立図書館・フランス文化省・ヴィクトリア&アルバート美術館・国立国会図書館・東京国立近代美術館・京都国立近代美術館・東京都現代美術館・目黒区美術館・横浜美術館・愛知県美術館・町田市立国際版画美術館・徳島県立近代美術館・浜松市美術館・栃木県立美術館・北海道立近代美術館・北海道立旭川美術館・新潟市美術館・岡山県立美術館・他

〔写真=個展会場の木原康行先生(2010年 ギャラリータマミジアム)〕


小林 千春(Chiharu Kobayashi)

小林千春作品『meteor2』

木原康行次女/グラフィックデザイン専門学校INITIATIVE(フランス・パリ)卒業/2010年小林千春展(OLD BOOKS & GALLERY SHIRASA/神戸市)/帰国後はイラストレーターとして活動し、絵本等多数制作/群馬県前橋市在住

〔図版=『meteor 2』(流星体シリーズより) 小林千春 イラストレーション作品〕


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