松本英一郎水彩画展-「退屈な風景」そして「さくら・うし」への造形思考|2006年10月14日(土)〜10月28日(土)〔水・木曜日休廊〕
「退屈な風景」そして「さくら・うし」を生涯のテーマとして描き続けてきた洋画家の故・松本英一郎先生による水彩画の展覧会「松本英一郎水彩画展」をご紹介。

松本英一郎水彩画展-展覧会のご案内
松本英一郎先生は1932年に福岡県でお生まれになり、1959年に東京芸術大学油画科(林教室)専攻科を修了しました。その後は独立美術協会会員の画家として、美術館での個展活動のほか、十果会展や日本秀作美術展にも作品を出品するなど、精力的な活動を続けていらっしゃいました。しかし2001年、作家は病によって、惜しくもその生涯の幕を閉じられました。
松本先生はすべて実際の風景を丁寧に、そしてまた納得のいくまで取材を重ね、それをもとに作品作りをしてこられました。その作風はひたすら穏やかでやさしく、また、作品全体に漂う、どことなくユーモラスな雰囲気が鑑賞者の眼を惹きつけてきました。創作活動は「平均的肥満体」の連作からはじまり、「退屈な風景」シリーズを経て「花と雲と牛」シリーズで完結することになりましたが、そのユニークな造形思考の変遷を辿ると、遺された膨大な数の水彩画スケッチに裏打ちされているように、画家としてのオリジナリティーを模索していた厳しい制作姿勢を垣間見ることができます。また、その創作活動の背景には、壮絶な闘病生活が強いられてきたことも忘れることはできません。
本展では、松本先生が長年にわたり手掛けられてきた「さくら・うし」シリーズを中心に、これまで未発表とされてきた水彩画作品32点を展示し、画家が取り組んできた水彩画の画業の一端を垣間見ようとするものです。
これまでに公開できる機会がほとんどなく、また、あまり人目に触れることのなかった貴重な水彩画の数々をご覧頂き、作家の造形思考の礎に触れる機会となれば幸いです。是非ご高覧ください。
〔図版=『退屈な風景・茶畑』 松本英一郎 水彩画〕
松本英一郎展-開催概要
展覧会-松本英一郎水彩画展-『退屈な風景・茶畑』そして『さくら・うし』への造形思考

14日(土)〜28日(土)、午前11時〜午後6時、名古屋市中区錦3丁目のギャラリータマミジアム(栄駅、電話052・957・3603)。
多摩美大教授を務め、01年に死去した洋画家の回顧展。一見無表情で退屈な風景を正視し続けることによって見えてくる「自然の息吹」を半抽象的に表現した。
今展は、静岡の茶畑をモチーフにした シリーズのほか、里山の風景を描いたものなど、水彩の特徴を生かした透明感のある風景画32点を展示。水曜日・木曜日休み。
〔朝日新聞2006年10月12日(木)より〕

松本泰子夫人と斎藤吾朗先生が会場内でご歓談
『松本英一郎水彩画展』開催中の10月22日(日)、東京から松本泰子夫人がご来廊されました。泰子夫人は14日(土)に続いて2回目のご来廊となりました。
また、この日は会場に故・松本英一郎先生と同じ独立美術協会に所属し、ルーブル美術館にて日本人として初めて「モナ・リザ」を公認模写した斎藤吾朗先生が駆けつけ、泰子夫人と松本先生の作品について、お話をされました。
斎藤先生は本展に出品された松本先生の水彩画を初めてご覧になり、『こんなにたくさんの優れた水彩画が遺されているとは全く知らなかった。油彩画作品とは、また一味違った松本先生の一面を見ることができて大変嬉しい。水彩画作品には、作品に対する画家の思いがダイレクトに表現されていて、作品制作の汗水の部分となった造形思考過程がよく分かる。さらにその筆使いには、そのお人柄までもが滲み出ているため、生粋の画家として格闘していた故人の思いが偲ばれる。これらの貴重な作品群を、是非多くの皆さんにご覧頂きたい。』とコメントされました。
〔写真左;松本泰子夫人・写真右;斎藤吾朗先生〕
風景以前の風景

風景以前の風景。いまだ景を成すに至っていない自然の貌。たとえば、しーんと静まりかえった無表情な茶畑の畝の風景を正視し続ける。すると、虚無ではない現実が見えてくる。そして、初めて心を縛っていた固定観念からすべてが解き放たれて浮遊しはじめる。
地球が壊されていく時代には、変わりのない平明な風景が意味を持つようになる。空気・光・土― 自然で根本のものこそ、かけがえのないものであることを、あっけらかんとした画面の奥に読み解くことができた時、 退屈な風景が退屈ではなくなってくる。
「退屈で、退屈で、体内がじんじんしてくれば、それが最高。」
〔松本英一郎;月刊「大樹誉」第15巻第6号通巻第157号(株式会社東興発行)1994年6月号より一部抜粋〕
〔図版=『茶畑飛行船』 松本英一郎 水彩画 ※展覧会出品作〕
私の風景画
私の風景画は、何時も、倦怠と恍惚が熱くない温色に包まれていなければならない。再生自然が与えてくれた輻射熱であっても、 快適な素振りをしていなければならない
私の風景画は、常に適温適湿であり、草の芽ほどの垂直物もあってはならない。
今となっては、 強すぎるからである。
〔松本英一郎;月刊「大樹誉」第15巻第6号通巻第157号(株式会社東興発行)1994年6月号より一部抜粋〕
松本英一郎 (まつもと えいいちろう)
1932 福岡県久留米市生まれ/1957年東京芸術大学油絵科林武教室卒業(大橋賞受賞)/第25回独立展入選(以降2001年の第69回展まで毎年出品)/1958年独立賞(59年・60年)/1959 東京芸術大学油絵科林武教室専攻科卒業/1960年独立美術協会会員となる/1974年コスモス展(サンパウロモダンアート/ブラジル)/第11回日本国際美術展(東京都美術館)/現代日本美術選抜展(栃木県立美術館)/1979年第1回十果会(日本橋高島屋・他/以降2001年の第23回展まで毎年出品)/1980年第2回日本秀作美術展(以後1990年より1999年まで毎年出品)/1982年フジテレビ『テレビ美術館-風景自然と造形の間』出演/1983年多摩美術大学教授となる/1984年八人の鬼才たち(池田20世紀美術館)/1987年松本英一郎展「退屈な風景」(銀座アートセンター)/1989年広島・ヒロシマ・HIROSHIMA(広島市現代美術館)/松本英一郎展(青梅市美術館/東京)/1991年ジャパンフェスティバルニューウェーブ展(カナダ)/1993年松本英一郎の世界-退屈な風景・さくら・うし-(池田20世紀美術館)/日本テレビ『美の世界』出演/1994年NHK『美の朝』出演/1999年5月脳梗塞で倒れる/9月まで入院/ 2001年平成13年6月17日 永眠(享年68歳)/2003年心に映るさくら展-大観・玉堂から現代作家まで(豊川地域文化広場桜ヶ丘ミュージアム)/松本英一郎展Works 1968-2001(多摩美術大学美術館)/2004年秋の絵画展(ギャラリータマミジアム)/2006年松本英一郎水彩画展-「退屈な風景・茶畑」そして「さくら・うし」への造形思考-(ギャラリータマミジアム)
作品収蔵
文化庁・京都国立近代美術館・東京都現代美術館・福岡県立美術館・栃木県立美術館・福岡市美術館・広島市現代美術館・青梅市立美術館・佐久市立近代美術館・高松市美術館・北九州市立美術館・池田20世紀美術館・他
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