画廊事始め|名古屋の画廊ギャラリータマミジアム

下山直子の画廊事始め〔『中日新聞』2000年(平成12年)10月3日(火曜日)掲載記事より〕

貸し画廊と貸しギャラリーは愛知県名古屋市中区にある画廊ギャラリータマミジアム。企画画廊として企画展も開催しております。

感性信じて作品選ぶ

感性信じて作品選ぶ 〔画廊オーナー下山直子さん〕

下山直子の中日新聞記事

芸術家と客の懸け橋に

 今年で創業250年という名古屋・栄にあるしにせの眼鏡店に生まれた下山直子さん(31)。多摩美術大学絵画科で学んだ彼女だが、身内に画家がいたわけでも、絵が得意だったわけでもない。美術との接点はなく、中学時代までは美術には関心を持っていなかった。

 高校に入った下山さんは、何となく美術室を訪れたのがきっかけで美術に目覚める。以来、学校帰りに美術館やギャラリーに足を運んだり、画集や美術雑誌を買い求めたり。その魅力にどんどん引き込まれていく。「音楽だと幼いうちからレッスンを積む必要があるそうですね。その点、美術系は高校から進学準備を始めても間に合いました」

 学生時代は油絵に限らず水彩、写真などさまざまなジャンルを幅広く学んだ。美術館の展覧会、工芸展、ギャラリーも可能な限り見て回る生活。大学院に進学してデザインを専攻し、修了後は母校のデザイン研究室に助手として勤務していた。

美術離れ眼鏡店修行も

 「父は強いて何も言いませんでしたが、やはり、店を継いでほしいという気持ちはあったと思います」

 先輩に当たり、同じ大学の図書館に勤める彼との結婚が決まった下山さん。これを機に、名古屋に戻って夫とともに父の元で眼鏡店経営を学ぶことになった。

 「経営学や眼鏡に関する知識から接客まで、勉強に必至。 2年ほど美術から離れた生活が続きました。そんな中で『美術に触れていたい!』という思いが少しずつ募っていたんですね」 昨年、250周年を前に店舗ビルを改修し、2階以上をテナントとして貸すことになった。 「この立地の良さを生かして、2階に画廊を!」と考えついた下山さんは、まず夫に相談。彼女の気持ちを理解する彼は賛成してくれた。

 ビルのオーナーである父は当初、渋っていた。しかし、他のテナントと同様にキチンと賃貸料を支払うという条件で合意。夫のサポートを受け、画廊のオープンとなった。

地域文化に貢献したい

 「画廊主としては素人同然で始めました。でもそれが幸いし、写真、油彩、版画・・・と自由に展覧会の企画が立てられたんです」と言う下山さん。自分の目で見て「いいな」と思う現代作家の作品を集めている。

 下山さんが意外に思ったのは「みなさん美術をむずかしく考えていらっしゃる」ということ。「頭で考えず、感覚的に見れば楽しめるのでは」とアドバイスする。 彼女自身は作家と客との懸け橋となるべく、技法、作家の来歴、作品の背景などの勉強を欠かさない。作品を引き立てるよう、展示にも心を砕く。

 「ギャラリーは入場無料です。ショッピングやカルチャーセンター教室のついでに立ち寄る主婦、昼休みのサラリーマン、かつて私のように美大を目指す高校生・・・いろいろな人に来ていただきたい」 「美術市場は冷え切っていて経営的には厳しいですが、地域文化に多少でも貢献できるという思いが励み。この仕事に運命のようなものを感じています」。美術を心から愛する気持ちがひしひしと伝わってきた。

(ライター・伊藤実和)

〔『中日新聞』2000年(平成12年)10月3日(火曜日)掲載記事より〕

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